真面目はガンコ?
こだわりを持つあまり考えが頑なになってしまうこと、過去の経験や出来事にとらわれて、選択肢の幅が自ら狭めてしまうこと…
自分自身は真面目に物事に取り組んでいただけなのに、ガンコだね、と言われたこと、誰しもが一度や二度は経験があるのではないでしょうか。
よく歳を重ねるとガンコになる…
そんな事を耳にすることがありますが、よくよく考えれば、歳をとった人がガンコというよりは、歳を重ねた分だけ得てきた様々な経験から自分の価値観や信念が固定化されたり、行動や思考の癖みたいなものができていき、それが強くあればあるほど、いわゆるガンコという外への印象を作っていくこともあるんだと感じることがあります。
WATTOに来られる方の中には、○○が出来るようになりたい、○○を改善したいという願いを持っている方が多くいますが、その成果を生むためには、これまでの自分自身の心持ちや生活に「変化」が求められることも当たり前にあります。
例えば、日常に運動習慣がなければ、生活に運動を取り入れてみたり、外出するために少しずつ屋外歩行を取り入れてみたり、新しく福祉用具を取り入れながらリハビリをしてみたり、ご家族の応援が必要になったり…
結局は何をするにしても大切なのは、環境、行動、気持ちも含めた新しい提案や考えに触れる頻度を上げ、それを受け入れられる気持ちの柔軟性を作ることだと思います。
もちろん、そこには、「不安」は付きまとうものだからこそ、そんな不安を乗り越えて、一つの成果をあげるために私たちWATTOの存在が皆さまにとってのサポーターとして重要な役割を担っています。
不安があればお互いの信頼を築き、趣味や楽しみを上手く活用し「楽しむ余裕」を持つことからチャレンジの幅を広げ、「次もやってみよう」「もっと楽しんでみよう」と前向きな気持ちを作る事は大切な取り組みです。
今回は、そんな取り組みの一例として、あるご利用者の方のエピソードをご紹介します。
お一人は、普段から理想の自分を持ち、自分のことは自分で、とこれまで人に頼らずに過ごされてきた方。つい先日、ちょっとした不注意から怪我をされ、自分に自信がなくなってしまったと気落ちがみられるHさん。
もう一人の方は、若い頃から真面目な性格で、何事も計画的に進めることを大切にされてきた方。大好きな料理を作る前には、事前にレシピを調べ、計量をきっちり行い、手順やその運びの一つ一つにこだわりを持つYさん。
性格は違ってもお二人に共通している事は「ガンコで真面目」
今回は生活行為のリハビリとして、Yさんに料理を作っていただき、Hさんにはそのお手伝いをお願いしました。最初はお二人とも、調味料をミリ単位で丁寧に分け、事前に準備した手順通りに進めることに全集中。協力というには程遠く、二人とも譲らない自分流。雰囲気だけはもはや料理対決と言わんばかりの真剣っぷり。
そんな二人もどのくらい時間が過ぎた頃だったか、集中力も次第に切れ始め、
「あれ?今何グラム入れたっけ?」
「まあ、いいか」
「ちょっとくらい違ってもいいよね」
と二人で笑いながらボソボソ密談。
最終的には「ざっくり料理」を作る始末。笑
職員は何もせず、ただただお二人の新しい体験という「変化」をクスクス笑顔で見守るだけ。
お二人だから作れた素敵な時間。それは、私たちにとっても嬉しい瞬間でした。
年齢を重ねるにつれ、ついついガンコになってしまう事は誰にだってあるからこそ、そういった自分を変えるためには、「新しい体験の数を増やすこと」が大切だな、とお二人から改めて教えてもらった気がします。何より相手を理解しようという気持ちが所々に見えた事が、この機会を通じての一番の「気持ちの変化」だったように感じます。
リハビリや運動の成果を生む事は簡単ではありませんが、私たちWATTOは、日々の対話や様々な体験を通じて、心に余裕を持ち、温かく充実した毎日を皆さんと過ごせるように、これからも皆さんお一人お一人との時間を大切に過ごしていきたいと思います。
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